コンコルディア・フィナンシャルグループが3月31日にニュースリリースした、2025年度からの3年間を計画期間とする新たな中期経営計画は、ROE(東証基準)9.0%超、当期利益1,200億円超という意欲的な数字を掲げており、大胆な目標の設定に驚いた。
目次
どこが意欲的なのか?
2024年3月期実績 | 新中計(2027年度)目標 | 増減 | |
ROE(東証基準) | 5.4% | 9.0%超 | +3.6% |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 669億円 | 1,200億円超 | +531億円超 (+79%) |
ROEについて
- 目標のROE(東証基準)9.0%は、2024年3月期の実績比では+3.6%、2025年3月期の業績予想の6.1%と比較しても+2.9%であり、急改善を目指すことになる。これは当社が地銀の中でいち早く打ち出した企業価値向上(PBR1倍超)実現のため、当社が算出する自社の資本コスト6~9%のクリアを目指して設定したものである。
- この水準は昨年発表されたMUFGの新中計のROE目標の9%と同水準(あるいはMUFGのROE目標が自行基準であることを勘案するとMUFGを上回る水準)であり、極めて意欲的と評価できる。
- めぶきフィナンシャルグループが3月17日に発表した新中計を見ても、コンコルディアと同水準の連結ROE(純資産ベース)9%以上を目標としている。同グループの2024年3月期の連結ROEは4.5%と中計目標の半分、2025年3月期
予想も5.6%とコンコルディアより低い水準であり、こちらも極めて意欲的な目標と言える。 - 大手地銀の今後のROE目標は、9%がスタンダードになる可能性があり、今後の他の大手地銀の動向も注目される。
当期純利益について
- 当社が開示しているROEロジックツリーでは、収益力強化がROE改善の大きな柱になっており、ROE9.0%超を達成に必要な水準から逆算して、当期純利益約8割増加という意欲的な目標が設定されたと考えられる。
- これは同様にROEの大幅改善を目指すめぶきフィナンシャルグループにも当てはまり、当期純利益は2024年3月期実績の433億円に対し、新中計では900億円以上に倍増を目標にしている。
この意欲的な目標は達成可能なのか
- ニュースリリースで発表されたコンコルディアの新中計の重点戦略は以下の図の通りで、「前中計に引き続き強化する戦略」と、「新たに強化する戦略」に分けて示されている。
- 収益改善に直結する最上段のGrowthの「新たに強化する戦略」に注目したが、「リレバンの一層の強化を通じた中小企業向け貸出の増強」と「粘着性の高い預金基盤の構築」は、この文言だけを見ると従来から取り組んできた施策で目新しさはないように感じた。「戦略的投資による機能拡充、グループ成長の加速」に関しても投資の果実を得るためには時間を要するのではと思った。
- 政策金利が0.5%→0.7%に引き上げられた場合に、約100億円超の当期純利益が見込まれており、こちらは日銀が利上げすれば実現可能性は高いと感じたが、米国トランプ大統領の関税政策によりマーケットが混乱しており、日銀の利上げ実施が不透明になったことが懸念される。
- 地銀の雄である両社には意欲的なこの目標を是非クリアして頂きたいところであるが、現時点ではなかなか目標達成への道筋が見えないため、5月の通期決算発表時には、より詳細な内容が開示されることを期待したい。

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